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極端紫外光研究施設(UVSOR) 分子研リポート2007 | 分子科学研究所

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326 研究施設の現状と将来計画

8-1 極端紫外光研究施設(UV S O R )

U V S OR は,1983年完成後,エネルギー 750 M eV ,エミッタンス 160 nm- rad の電子蓄積リングにアンジュレータ 2台と超電導ウィグラを設置した典型的な第2世代の低エネルギーシンクロトロン光源であったが,2003年の大改 造以降の一連の改造により低エネルギーリングとして極端紫外光領域に最適化された第3世代光源 U V S O R - I I へと生 まれ変わった。エミッタンスは 27 nm- rad で定常的に運転されており,これは 1 G eV 以下の光源(建設/立ち上げ調 整中のものを除く)では世界最高性能である。UV S OR -II の運転時間は建設時の放射線申請により1日12時間に制限 されてきたが,2006年夏に変更申請を行い,1日24時間の運転が可能となった。これによって,通常の1日12時 間の共同利用に加えて将来に向けての R & D の時間を夜間等に確保できるようになった。

また,U V S OR - II 計画を実現させるための前準備として,22本あったビームラインの評価を実施し,U V S OR - II 計 画が実現したときにその光源性能を生かせるビームラインの強化策/改造策を打ち出す一方,光源性能を生かせない ような老朽化したビームラインや他施設に比較して光源性能に優れないエネルギー領域まで拡大したビームラインを 順次,廃止していった。現在,13本まで絞り込んだが,2007年度の研究成果は,22本あった時代の研究成果をす でに量・質ともに越えるようになった。現在の U V S O R - I I におけるビームライン再構築の大方針は,8カ所ある偏向 電磁石それぞれに明るいビームラインを1本ずつとし(光源の発散を複数のビームラインで分割して使うのではな く),8カ所ある直線部のうち,4 m の長直線部のすべてにアンジュレータを導入し,1.5 m の短直線部の2カ所にも アンジュレータを導入することである。現在,偏向磁石ラインは10本→9本へ,直線ラインは3本→4本へ移行中 である。アンジュレータ2台は真空封止型であり,比較的短波長領域を,また,残り2台は可変偏光型であり,比較 的長波長側をカバーする。これらのビームラインはすべて世界トップクラスであり,国際的な利用も始まっている。

8-1-1 UV S O R -II の高度化の現状と展望

今後1〜2年の U V S O R - I I 光源加速器の高度化としては,①トップアップ運転の導入,②軌道安定化,③挿入光源 の更なる増設の3つが柱になる。また,④多様な利用モードを可能にする運転時間の見直しも必要である。将来的には,

⑤現在,スウェーデンで立ち上げ調整中の小型リング M A X - I I I の光源性能を超える U V S O R - I I I のための改造も視野 に入れる必要がある。以下に,それぞれについて簡単に説明する。

(1) トップアップ運転の実現に向けては,既に,ブースターシンクロトロンのフルエネルギー化(従来は最大エネル ギーが 600 M eVであったが,電磁石電源の増強により 750 M eV まで向上)と放射線遮蔽壁の増強とを完了し,入射 路のフルエネルギー化を2007年春から可能にした。2008年春に,フルエネルギー入射調整,輸送効率の向上,イ ンタロックシステムの整備などを行い,2008年度後半にトップアップ運転の定常化を目指す(加速器施設としての 放射線変更申請の許可が必須)。また,トップアップ運転と24時間運転を組み合わせれば,予算増加がない中,同じ ようなビームラインの数を増やさないでも当分は利用者の増加を凌げることになる。ビームラインの絞り込みは質の 向上のための予算確保の方策として不可欠である。

(2) U V S O R - I I では数時間で 100 ミクロンを超えるような軌道変動が観測されており,光源本来の高輝度特性を活か す妨げとなっているが,現在既にこの軌道変動の原因究明と軌道安定化システムの開発に目処がたったところである。 水平方向の軌道安定化については既に部分的にフィードバックシステムを導入しており,今後,水平垂直両方向の安 定化システムを導入する。

(3) U V S O R - I I 光源加速器の設計はアンジュレータ利用に最適化されたものとなっており,光源本来の特徴を活かす ためにも,アンジュレータ及びビームラインの早期の整備が望まれる。どのようなアンジュレータを整備するか,利

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研究施設の現状と将来計画 327 用側と協議しながら検討を進めていく。現在,B L 6U を建設中であり,そのあとは B L 4U がターゲットになる。さらに, 入射点の移動など機器の再配置を行うことで,現在入射に使用している 4 m の長直線部(最後の一カ所)を挿入光源 用として,長尺の B L 1U を具体化する方向での議論を行っている。当面,外部資金獲得を目指すが,うまく獲得でき なかったときには,長期リースなどを利用することで,現予算から捻出することも考える。

(4) 光源性能そのものではないが,運転時間についても,拡大の余地が出てきている。UV S OR -II の運転時間は現在, 1日24時間が可能となった。マンパワーの問題でユーザー運転の延長を直ちに行える状況にはないが,シングルバ ンチ運転,自由電子レーザー利用など,ユーザーの限られる特殊な運転モードを夜間に実施することを試験的に開始 している。柔軟な運転モードの切り替えは小型施設の特徴を活かせるものであり,従来にないシンクロトロン光の新 しい利用形態が開拓できるのではないか,模索しているところである。

(5) 更に長期的な展望としては,U V S OR -III 計画と名付けることのできる光源リングの更なる高度化改造の可能性が ある。予備的な検討により偏向電磁石を複合機能型とすることで,現在のエミッタンス 27 nm-rad を更に 15 nm-rad 程 度まで改善できることが既にわかっているので,長直線部4カ所すべてに高性能なアンジュレータを導入することと 併せて,検討を進めていく。

8-1-2 UV S O R 自由電子レーザーの現状と展望

U V S O R における自由電子レーザー開発は,加速器の設計段階から光共振器の建設を想定しているなど,施設の看 板ともいえるものである。実際90年代には,円偏光型光クライストロンの導入により当時の発振短波長世界記録を 樹立するなど,F E L研究で華々しい成果を挙げた。しかし,その後は,D uk e 大学や産総研などにおける F E L専用リ ングの稼動,第3世代リング E l ettra における F E L実験の開始などにより,開発研究面での競争力が低下し,一方, 発振波長域は紫外から可視光に限られていることから,通常レーザーとの競合もあり,利用研究はほとんど進まなかっ た。

しかし,2000年代になり光源加速器が U V S O R - I I へと改造されたことで,再び世界的な競争力を取り戻した。低 エミッタンス化と高周波加速系の増強によるピーク電流値の向上で,波長 200–250 nm の深紫外の領域で大強度の発 振が可能となった。また,従来 F E L実験は電子エネルギー 600 M eVで行っていたが,750 M eVでも発振できるよう になり,その結果,ビーム寿命が長くなり発振継続時間が長くなると同時に平均出力も向上,波長によっては 1 W を 超えるまでになり,蓄積リング F E Lとしては出力で世界最強となった。深紫外領域で波長連続可変,高出力という特 徴は,通常レーザーと比べても一定の競争力があり,利用の申し込みも徐々に増えてきている。今後は,利用に向け た研究開発・装置の整備が重要となってくる。

F E L性能そのものに関する今後の展望としては,光クライストロンの更新による更なる短波長化,大強度化が考え られる。B L 1U 計画を進める際に,3 m 強の光クライストロンを導入することで,E l ettra や D uk e 大学と同等の波長 180 nm 付近での発振も可能となる。更なる短波長化には,ミラーそのものの開発研究が必要となってくる。

8-1-3 外部レーザーを併用した新しい次世代光源開発

2005年に U V S O R - I I の高周波加速と同期の取れるフェムト秒レーザー装置が導入された。これを利用した複数の 新しい光発生法に関する研究がスタートしている。

レーザーバンチスライスは90年代の後半に米国の研究チームにより提唱されたビーム技術であり,極短レーザー パルスと電子バンチをアンジュレータ中で相互作用させることで,電子バンチの一部に強いエネルギー変調が生成さ

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328 研究施設の現状と将来計画

れ,このバンチが蓄積リングを進行する際に変調を受けた部分が切り出される,というものである。切り出されたバ ンチの一部はレーザーパルス長と同程度の長さとなるために,その部分からの放射光を取り出すことでフェムト秒の 放射光パルスを生成する,というのが当初のアイデアであった。しかし同時に,残りのバンチ上に形成されたディッ プ構造からテラヘルツ領域のコヒーレントシンクロトロン放射が生成されるため,現在はこれら2つの目的で研究が 進められている。これまで,A L S ,B E S S Y - II が先行しており,U V S OR - II での実験は世界的には3例目ということに なる。最近では S L S でも開始されたとの情報があり,S oleil などでも導入が検討されているようである。

他 の 施 設 で は バ ン チ ス ラ イ ス 実 験 の た め に 加 速 器 の 一 部 を 改 造 す る な ど 大 掛 か り な 準 備 が 必 要 で あ っ た が, U V S O R - I I では既存の自由電子レーザー用の装置群を流用することで加速器本体には全く手を加えることなく実験を 開始することが出来た。また,電子エネルギーが低いために,必要なエネルギー変調を生成するためのレーザーパワー が比較的低くてよい。最初の実験で直ちに,大強度のコヒーレントテラヘルツ光の発生を確認でき,その後,分子研 の国際共同研究を利用したリール工科大学(仏)との共同実験で入射レーザーパルス形状の制御により,波長可変準 単色のテラヘルツ光の生成に成功するなど,世界的にもトップレベルの成果が挙がるようになってきた。テラヘルツ 光の観測は既存の赤外ビームライン B L 6B を用いて行っている。今後は利用法の開拓とそれに向けた光源開発を更に 進めていく。

なお,テラヘルツ光の観測によりバンチスライスが起きていることは実証できているものの,フェムト秒放射光の 直接観測はまだ行っていない。バンチスライス法は既存の放射光リングで,従来の放射光とは異なる時間構造,ある いは,ピーク強度の桁違いに強い光を比較的簡便に生成できる。これら各種の光の単独での利用に加えて,通常の放 射光や F E Lを含めた,複数の性質の異なる光を同時に利用するタイプの利用方法を開発していくことが今後,新しい 研究分野を切り開くことにつながる可能性がある。

8-1-4 新しい光源建設の可能性

新しい加速器の建設を伴う将来計画の検討では,これまで様々な可能性を幅広く検討してきた。現在,世界に於け る先端的な光源加速器施設は全く異なる性質を持つリング型と直線型を併設するのが標準になりつつある。通常の レーザー光源を組み合わせることで,さらなる発展も期待されている。U V S O R はこれまでリング型を中心に新たな 光源開発を組み込んで共同利用に供してきたが,今後は U V S O R で培ってきた光源開発技術を直線型にも応用するこ とで,世界に先駆けて新たな特性をもつ光源が分子科学に於いて最初に使えるようにする必要があろう。

現在考えられる将来計画の主なものについて以下にまとめておく。

(1) リング型光源

U V S OR の次期計画として,U V S OR - I I から U V S OR - I I I への改造ではなくて,全く新しいリング型光源を建設する 場合,考えられる方向性は以下の3つであると思われる。

(a) 1GeV級小型X線リング

(b) 2–3GeV級中規模第3世代リング (c) 1GeV級超高輝度リング

このうち ( a) は 1G eV級の小型リングに超電導偏向電磁石を導入することで硬X線の発生可能な小型施設を建設す るというものであるが,これについては現 U V S O R の後継機として岡崎の地で考える必要はなく,愛知県が名古屋大 学等の県内大学の協力(U V S O R 施設も部分的に協力)を得て実現を目指しているところである。高輝度ではないも

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研究施設の現状と将来計画 329 のの U V S O R - I I では出せない硬X線領域までカバーする施設が近隣にできることになり,U V S O R - I I とは相補的な役 割を果たす。また,U V S O R ではハード的な資源が限られ,大学等の学術研究に加えて,民間利用を受けるだけの余 裕はないが,愛知県の施設では民間利用が中心になるので,U V S O R として愛知県の施設の場を使ってソフト面で民 間利用への協力ができる可能性がある。

(b) の 2–3GeV級中規模第3世代リングは,東大・東北大がかつて建設を目指していたような規模・性能の光源であ る。東大や東北大が断念したことを考えると現在の日本では予算規模や敷地の問題など実現は容易ではなく,UV S OR の後継機の可能性のひとつにするのはあまりに非現実的である。一方,このクラスの施設は現在,中国,台湾,韓国 では既に建設されていたり,計画が認められたりしているため,今後は U V S O R の海外展開も視野に入れて考える必 要があろう。幸い,韓国からは光源開発への全面的協力など期待されているので,今後,連携を深めていく予定である。

( c) は 1G eV級でエミッタンス 1 nm- rad もしくはそれ以下の超低エミッタンスリングを想定している。V U V領域で の回折限界光源の実現を目指す。既存の加速器技術を用いて実現できる可能性があるものである。また,共振器型自 由 電 子 レ ー ザ ー や C H G な ど 外 部 レ ー ザ ー と 組 み 合 わ せ た コ ヒ ー レ ン ト 光 発 生 装 置 も 併 設 で き る 可 能 性 が あ る。 UV S OR の後継機としては,これが最も適当であろう。

(2) 直線加速器を用いた自由電子レーザーの可能性

現在,世界に於ける先端的な光源加速器施設は全く異なる性質を持つリング型と直線型を併設するのが標準になり つつある。X線自由電子レーザーのテスト機程度もしくはもう少しエネルギーの高いライナックを利用して,シード 光を用いたシングルパス型自由電子レーザーを原理とする光源を U V S O R に併設する。X線自由電子レーザーやリニ アコライダーなどの建設を通じて確立される加速器技術と,現在 U V S O R - I I で行っている C H G に関する基礎研究で 得られた知見などをベースに実現する。V U V ・軟X領域でのコヒーレント光,極短パルス光の発生を目指す。併設が 不可能な場合には他機関の加速器装置を利用した光源開発や利用研究も想定しておくべきであろう。

参照

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